酒美飯囲ひろし 坂口浩史氏

東小金井 酒美飯囲 ひろし

美味しい酒と美味しい飯。どんな人にも扉を開いていたい…「酒美飯囲 ひろし」の『坂口浩史氏』にお話を伺いました。

「酒美飯囲 ひろし」 外観

東小金井駅からダッシュで30秒!!!オレンジ色の看板が目印!

■飲食業に入られたきっかけは?
中華系のファミリーレストランでアルバイトを始めたのが最初です。高校2年生の頃からアルバイトをしていたので、ちょうど卒業してからの進路を考えなくてはいけない頃でした。チャーハンが作れたらカッコイイなぁと思ってコックになるか、もしくはバンドマンになろうと思っていましたね(笑)チャーハンが作れたらカッコイイだろうと思ったのは本当なのですが、それにプラスして、従業員にまかないを作ってあげたらすごく喜んでもらえたことがあって。それが結果的に、飲食業への扉を開くきっかけになったのだと思います。

高校卒業後、音楽は趣味と決めて、武蔵野調理師専門学校に通いました。この学校で僕を紹介してくれた「螢月」の牛山くんと知り会いました。毎日一緒に居ましたね(笑)その後、牛山くんは「螢月」に入って日本酒人となるのですが、僕はコックになろうと思っていましたから、専門学校を卒業した後は、ホテルオークラエンタープライズに就職し、川口そごうで4年、三鷹産業プラザで6年と10年ほどずっと、ホテルオークラレストランの中華料理店でコックとして働いていました。
 
 

「酒美飯囲 ひろし」 店内

店内は黒と木目の茶を基調とした落ち着いた雰囲気。カウンター後ろにはテーブル席と、奥には大人数にも対応できるお座敷席がある。

■ホテルオークラ時代~独立への思い
就職して2~3年の間は、「ここで修行をして僕はいつか自分のお店を作るんだ!」という強い思いを持って働いていたのですが、川口そごう店がとにかく忙しすぎて、何のために仕事をしているのか、わからなくなってしまった時期がありました。結果、仕事をこなすのが精一杯になっていき、次第にお店を持つという意識が薄れていました。三鷹のお店に移ってからは、前菜などの料理を任されるようになり、まかないなども自分の好きにできるようになって、また料理をすることを楽しむ余裕が出てきたのです。そこで、従業員にまかないを作ってあげたらすごく喜んでもらえて。「自分は、お客様が喜んでくれるのがうれしくてコックの道を選んだのだ!この感覚が僕をここに連れてきてくれたんだ!」と、思い出しました。

けれど、ここでは調理のみで接客は一切することがないので、お客様の反応を直に感じることができませんでした。ホール担当が「お客様が喜んでいましたよ」と伝えてはくれますが、やはりダイレクトに言ってもらえるのとは違うので、またふつふつと独立への思いが芽生え始めました。独立への思いを感じ始めたことで、仕事への違和感が強くなり、29歳の時、ホテルオークラエンタープライズをやめました。
 
 

■料理×日本酒
独立を考え始めた頃は、僕の先輩がやっている埼玉県所沢の「チャイニーズダイニングバー kenzo」みたいなお店を目指していました。そこはバーなのにホテル並みの中華料理が出てくるお店なのです。もともと中華料理は好きでしたが、お酒は紹興酒やビールだけで中華居酒屋みたいな雰囲気は、どうも違うなと思っていたので、カクテルや自分の好きな焼酎などが主体のバーで中華料理を出したいと思っていました。

しかし、中華料理にカクテルだと、合うお酒も限られてしまうのではないかと思いましたので、お酒についてもっと勉強したいと思い、まずは自分の好きな焼酎がたくさん置いてありそうな、東伏見にある「呑み食い処 希林(きりん)」というお店に入りました。ところが入ってみたら、実は日本酒もちゃんとたくさん置いてあるお店だったのです。それまでも、もちろん日本酒は飲んだことはありましたが、メジャーな日本酒しか飲んだことがなかったですし、そこまで日本酒に思い入れもありませんでしたが、そのお店で、室や生原酒が何なのかを知るようになりました。お料理は、特に和食と洋食が得意な料理長さんがいたのです。しかも、基本がしっかりあった上での創作性、独創性がすごく面白いのです。中華料理以外のお料理も勉強するとてもいい機会になりました。うちで今、お薦めとして出している「レバーペースト」も、ここで教わったものが軸となっています。本当に何を食べても美味しいので「ウリの料理は全部です」と言い切れる居酒屋さんもいいなぁと思うようになりましたね。

「希林」で働きながら掛け持ちで、三鷹の「串焼きPISTE(ピステ)」というお店でも働いていたのですが、ここがまた日本酒が充実したお店でした。この「ピステ」で、たくさん日本酒を試飲させていただき、いろんな味を教えてもらいました。「ピステ」のオーナーさんが日本酒が好きな方で、あまり多くを語るタイプではないのですが、試飲しながら、味の違いをあーでもないこーでもないと教えてもらいました。

そんな2つのお店で日本酒に囲まれて働いているうちに、日本酒にどんどん興味が沸いてきて、仕入れ以外のプライベートで日本酒のことを知りたくて、酒屋さんに行くようになりました。「希林」と「ピステ」で働いたことで、中華料理により過ぎないオールジャンルの料理と日本酒という今の「酒美飯囲 ひろし」の土台が作られたんだと思います。

■お店で扱っている日本酒について
「ピステ」で働いている時に、「獺祭(だっさい)」というお酒を飲んで、フルーティで美味しいなぁと思ったのがきっかけで、そこからどんどん日本酒の魅力にハマっていきました。僕は、キリっとした辛口の日本酒よりも、「獺祭(だっさい)」のように、ちょっと甘みのある甘口(うまくち)系のフルーティなタイプが好きなので、東村山にある東京の地酒「屋守(おくのかみ)」など、7~8割は甘口の日本酒を揃えています。メニューに載せているものは15種類ですが、お店には常時30種類くらいの日本酒が置いてあります。お付き合いしている酒屋さんが僕の好みを知っていてくれるので、今は特に新種の時期ですし、お客様にも様々なものを試していただけるように、あまり決めうちをせずに仕入れています。

この酒屋さんは宮田酒店さんというのですが、「ピステ」からのお付き合いで、実は、「螢月」の牛山くんがしばらく働いていたお店で、牛山くんがピステに配達に来ていたんです(笑)でも、牛山くんが、ピステに配達していた頃は、僕はまだホテルオークラの三鷹産業プラザに勤めていた頃で、配達の途中に何回も会ったりしていたんですね。その頃は、僕は日本酒のことはよく知らなかったけれど、後に牛山くんが「螢月」のオーナーとなり、それから何年もして、自分が「ピステ」に入ったら宮田酒店の存在を知りと、すべてが一気に繋がったような気がしました。

19歳で調理師学校に入り、牛山くんと出会った頃は、僕はまだ中華料理のコックになりたいと思っていましたし、日本酒もまったく知らずに、カルアミルクのような甘いお酒が大好き!という人間でしたから(笑)それが、日本酒をメインにした居酒屋を開くことになるんですから、人生ってわからないし、面白いなと思いますね。
 

「酒美飯囲 ひろし」のオーナー坂口浩史氏

インタビュー中も手際よく仕込みをするオーナーの坂口浩史氏。

■飲食店の役割とは…
お店を出店する少し前に「屋守(おくのかみ)」の酒蔵に行くきっかけがあって、ずっと熱いテンションで日本酒のこと、酒蔵のことを語り続けている造り手さんいたんです。最初はちょっと引いて聞いていたのですが、最後に試飲をしながらその思いを聞いて、本当に感動したのです。

そんな風に、熱い思いを抱えてる造り手さんがいても、蔵に行ったりしなければ、直接その思いを感じることはできないわけですよね。だからこそ、その思いを伝えたいし、それをお酒を飲む人に伝えられるのは、飲食店をやっている僕たちなんだと思ったときに、その役割の重要さに気がつきました。だから、この酒美飯囲で働くアルバイトを面接したときも、その話をして、この「思い伝えたい」という意味をわかった上で働いてほしいということを伝えました。

「酒美飯囲 ひろし」 オススメの料理

豊島屋酒造「屋守(おくのかみ)」と左から、ひろし自慢のレバーペースト(680円)、ひろし特製洋風お新香(480円)、自家製スモーク たくあん(380円)

■今後の「酒美飯囲ひろし」について
近くに農工大があるのですが、学生さんたちは飲み放題のお店などの安い酒を飲むことが多いらしく、そういう人たちに、価格が安いものでも美味しいお酒があることを知って欲しいし、それを提供できるお店でありたいです。僕が「ピステ」で、自分好みの「獺祭(だっさい)」を見つけたように、マニアックな日本酒好きの方をメインターゲットにというよりは、20~30代の人たちなど、まだあまり日本酒を知らない人が日本酒の美味しさを知ってもらえる「きっかけ」になるようなお店になったらいいなと思っています。

「お料理は何食べても美味しいし、日本酒も気軽に楽しめて、なんか雰囲気いいよねあの店」って言ってもらえるようなお店にしたいです。やっぱり基本が、お客様の喜んでもらいたいという思いがあります。あとは日本酒についてはまだまだ知らないことがたくさんありますので、僕自身がもっと勉強していきたいです。
 


酒を飲んで美味しい、飯を食べて美味しい。みなで飯を囲ながら様々な人たちに楽しんでもらえるような守備範囲のひろいお店にしたいという思いを重ね、ターゲットもあえて絞らずにたくさんのお客さんと共にこのお店を作り上げていきたいと、語る坂口氏。18歳の頃から飲食の道へ進み、自分のためにきっと、いくつもの扉を開いてきたのだろう。それから15年、坂口氏はカウンターに立って、料理の腕を振るい、造り手の思いを伝えるべく店を開く。首尾は上々のようだ。たくさんの人へ飲食を楽しめる場所という大きな扉はもう、坂口氏の手で開かれているのだから。
(文と写真:黒田みいこ)

「酒美飯囲 ひろし」の坂口浩史氏

【プロフィール】坂口浩史氏

1979年、東京生まれ。武蔵野調理師学校を卒業後、ホテルオークラエンタープライズに入社。川口そごうや、三鷹産業プラザのホテルオークラレストランの中華料理店にてシェフとして10年間、従事する。退社後、東伏見の「希林」では主に和食や洋食などの料理、三鷹の「串焼きPISTE(ピステ)」では日本酒について学び、2011年11月に独立し「酒美飯囲 ひろし」を東小金井にオープン。得意の中華料理を軸に、地元の人たちが気軽にお料理と日本酒を楽しめるお店にしたいと、日々奮闘中。

【店舗情報】 酒美飯囲 ひろし (しゅびはんい ひろし)

住所:
東京都小金井市東町4-41-2
アクセス:
東小金井駅から30秒
電話:
042-301-5533
営業時間:
[月~木] 18:00~26:00
定休日:
無休
席数/坪数:
37席/ 17.8坪
客単価:
3,200円